ご 挨 拶

一般社団法人日本医療福祉設備協会が主催しております「日本医療福祉設備学会」は、本年で第43回を迎え、11月12日(水)と11月13日(木)の2日間、東京ビッグサイトにて開催いたします。また、併設展示HOSPEX Japan 2014は、一般社団法人日本能率協会との共催で、11月12日(水)~11月14日(金)の3日間、同時開催されます。

我が国では、超高齢社会の到来に伴う患者の高齢化により、病院建築・設備計画においても基本に立ちかえっての再検討が余儀なくされてきています。これまでの「病気の完治を最終目的とした医療」から、「患者を支える医療」への価値観の変化、パラダイムシフトに対応した、患者と環境に優しい病院づくりが一層求められるようになってきています。

現在の病院設計においては、1980年代の経済の高度成長期の中で、一応の成熟期を迎えた病院モデルが今日まで施設計画のベースとなっています。しかしながら、その時点において65歳以上の入院患者の高齢化比率はわずか35~40%であったものが、現在では約70%にまで増大しており、これがさらに2025年シナリオにおける病院では、75%以上となることが予想されています。患者モデルにおける生産年齢患者と高齢患者の比率が反転してしまった現状に対して、もはや80年代モデルのマイナーチェンジでは対応しきれなくなってきています。病院計画の基本に立ち返り、患者の高齢化に対応した建築・設備計画が再構築されなければなりません。

そこで本年の第43回学会のテーマを「超高齢社会を支えるヘルスケアエンジニアリング」とし、超高齢社会の進行の中で、地域包括ケアシステム等に対応した、安心・安全・快適で持続可能なヘルスケアエンジニアリングの在り方を、皆様と共に考えていく機会といたしたく、プログラムを企画いたしました。

超高齢化の時代における医療施設にあっては、それぞれの患者の「QOL」や「QOD」の価値観に沿って、さらに患者に寄り添うヘルスケアエンジニアリングが求められています。患者とスタッフのさらなる近接性や患者の尊厳性、プライバシーへの配慮が求められ、これまでの医療側の機能や効率性を重視した施設計画手法から、価値観の変化に対応した患者ケア型の手法へとシフトしていかなくてはなりません。世界に先駆けて超高齢社会のトップランナーとなった我が国が目指している、いわゆる、日本的「おもてなしホスピタル」の成熟は、世界の規範となることでしょう。

本学会では、今後のヘルスケアエンジニアリングについて、多分野・領域の「作り手」と「使い手」の双方の視点から講演・発表して頂き、再構築の手がかりを見出そうと考えております。多くの示唆を得て頂くことができるであろうと考えますので、どうぞご期待下さい。

会員をはじめ、関係の皆様方の多数のご参加をお待ちしております。

注)・QOL:Quality Of Life ・QOD:Quality Of Death

第43回日本医療福祉設備学会
学会長  辻  吉 隆