第43回日本医療福祉設備学会 一般演題優秀発表賞 受賞にあたって

桑波田 謙氏 (㈱クワハタデザインオフィス)

受賞演題「突起の小さな屋内用点字ブロックの開発

点字ブロックの設置にともなうコンフリクトの解消を目指して

この度は、第43回日本医療福祉設備学会一般演題優秀発表賞の栄誉を賜り、大変光栄に存じます。共同研究者である近畿大学の柳原崇男先生をはじめ、研究にご協力頂きました兵庫県立福祉のまちづくり研究所研究部門の皆様、神奈川県総合リハビリテーションセンター研究部の皆様に心より感謝致します。

本研究は、点字ブロックの設置に伴う視覚障がい者と車いす利用者等の対立(コンフリクト)を、デザインで解消しようとした取り組みです。突起の高さを下げることで不便さを解消し、突起の形状を工夫することで視覚障がい者が白杖を利用した時のわかりやすさを確保しました。その結果、視覚障がい者を案内できる範囲が格段に広がることとなりました。病院には身体に不具合を抱えた様々な患者さんが訪れますが、個別な課題解決に加え、全体の最適化がとても重要です。本研究が評価された背景に、バリアフリーからユニバーサルデザインへと、社会的なニーズの変化を強く感じています。

小出 真澄氏 (㈱エフエスユニマネジメント 臨床検査技師)

受賞演題「欧州にあって日本にはない中央材料室設計の視点

欧州にあって日本にはない中央材料室設計の視点

この度は、第43回日本医療福祉設備学会「一般演題優秀発表賞」にご選定いただき、大変光栄に存じます。共同研究者をはじめ、研究について助言をいただきました㈱佐藤総合計画の永井様に心より感謝申し上げます。発表させていただいた中で触れておりますが、欧州では器材からのCJD感染リスクや感染管理意識の高まりをきっかけに、器材の安全な再生についての議論が起こり、現在のように中央材料室の設計ガイドラインが病院建築ルールに組み込まれました。我が国でも進化する術式や複雑な器材、厳密化する感染管理に対応できる中央材料室が求められていると感じます。

今後、中央材料室設計は与えられたフロアに合わせるのではなく、設計ルールを基に運用やコストを含めて基本設計時に専門家が議論することが必要であると考えます。 今後も中央材料室の設計と運用に関する研究を進めて参りたいと思いますので、学会のご支援とご指導をよろしくお願いいたします。

西村 訓弘氏 (三重大学大学院医学系研究科 トランスレーショナル医科学)

受賞演題「病院空調設備の加湿システムにおける微生物の実態調査(第2報)

病院空調設備の加湿システムの最適化にこだわって

第43回日本医療福祉設備学会「一般演題優秀発表賞」へのご選定、誠にありがとうございました。本研究は、病院施設における加湿方法として固定的に蒸気式が採用されていたことに疑問を感じ、共同研究先である新日本空調株式会社の神戸正純氏、張江氏、株式会社竹中工務店の角晴輝氏などの協力を得て、取り組んだものです。三重大学の取り壊しが決まった蒸気式加湿器を使用していた旧病棟に気化式加湿装置を並列で設置し、実機を使った検証試験から開始し、新病棟に導入した気化式加湿器の実運転の追跡を経て、蒸気式と気化式の加湿システムに差異がないことを示しました。今回の発表はその集大成とも言えるものであり、この度は、そのことをご評価いただけたと感慨深く感じております。受賞の栄誉に恥じぬよう、医学領域の立場から病院空調にこだわった探究でこれからも実社会に貢献できればと思います。

福田 美桜氏 (慶應義塾大学大学院理工学研究科 西宏章研究室)

受賞演題「個人の活動や嗜好を考慮したHEMSの構築

省エネルギーと快適性の両立を目指して

この度は、第43回日本医療福祉設備学会一般演題優秀発表賞の栄誉を賜り、大変光栄に存じます。日頃からご指導いただいております慶應義塾大学西宏章教授、執筆にあたりご助言を頂きました松井加奈絵研究員並びに東京電力株式会社横川様、森本様、亀山様、また実験関係者の皆様へ心より感謝申し上げます。

本発表ではスマートフォンを用いて個人の活動量や快適性嗜好を推定し、省エネルギーと快適性向上の両立をはかる家庭エネルギーマネジメントシステムを提案致しました。また調査を進めていく中で、温熱環境の変化に対し感度の低いユーザが存在することが分かりました。このようなユーザは熱中症などのリスクが高いと考えられるため、空調の自動制御や医療機関との連携の必要性についても述べさせていただきました。現状の快適性調査はユーザへの負担が多いことから,今後は負担の少ない調査手法について提案・実証を行い、省エネルギーと快適性の更なる向上に努める所存です。

堀 純也氏 (岡山理科大学 理学部 応用物理学科 医用科学専攻)

受賞演題「AEDの使い捨てパッドに対して低温環境が与える影響

AEDの使い捨てパッドに対して低温環境が与える影響

この度は、第43回日本医療福祉設備学会の一般演題優秀発表賞に選定いただき大変光栄に思います。本研究は、AEDの電極パッドに対して低温がもたらす影響を調べたものです。AEDは公共施設をはじめ、様々な場所で見かけるようになりましたが、一般市民も使用する医療機器であるため、その管理が問題となっています。AEDの使用可能温度はマニュアル等で指定されているものの、実際に設置してある場所の気温がその温度範囲から意図せずに逸脱する可能性が否定できません。実際に低温環境では、パッドを剥がす際に破損し、使用できない事例が確認されました。したがって、AEDの設置環境温度に関して設備側の面からもより注意を払う必要があると思われます。今後は高温環境に関しての実験も進めていきたいと考えておりますので、これからもご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。

なお、本研究はJSPS科研費25870972の助成を受けて行われたものです。ここに感謝の意を表します。