第43回日本医療福祉設備学会 一般演題優秀発表賞 受賞にあたって

受賞演題
  「手術室の多様性と可変化事例について

河越 健一 氏 ((株)セントラルユニ 新規事業開発チーム AFSプロジェクト)

「あったらいいな」を叶えたい

この度は、第44回医療福祉設備協会「一般演題優秀発表賞」にご選定頂き、誠にありがとうございます。共同開発で尽力賜りました鹿島建設株式会社郡様、株式会社イトーキ神保様をはじめとした皆様方へ心から感謝申し上げます。
昨今の手術室では、医療器具の進歩や手術手技の多様化に伴い、診療科目、術式により各々適正な手術室のサイズが求められるようになっております。また、モニター配置や壁面器材の配置、術者やスタッフの人員数なども、室面積算定のファクターとなっており、当該手術室が『定められた科目・術式』のみに対応する手術室計画となっていることも散見されます。手術室の可変化は、そうした医療環境の潜在するニーズとして捉え取り組んだものであり、このことは手術の効率化や運用改善に大きく寄与するものと考えます。
実際の医療現場での「想い」を感じ具現化すること、またそこに技術的配慮を盛り込むことにより、更なる最適環境の実現に向け今後も尽力する所存です。

受賞演題
  「スマートフォンを利用した医療スタッフ所在管理システムの開発

川邊 学 氏 (埼玉医科大学 保健医療学部 医用生体工学科)

スマートフォンを利用した医療スタッフ所在管理システムの開発

この度は、第44回日本医療福祉設備学会一般演題優秀発表賞の栄誉を賜り、大変光栄に存じます。共同研究者としてご指導ご協力頂きました埼玉医科大学保健医療学部加納隆教授、音波と電波を用いたスマートフォンの位置検出のアイデア及びご助言を頂きました大成建設(株)技術センター末田隆敏氏に心より感謝いたします。
医療機関内における人の位置検出は、動線管理による業務改善や感染患者発生時の接触者スタッフの特定等に役立つと考えられます。病院内は、病棟、集中治療室や待合室など大小の部屋があり、電波のみの位置検出では近隣の部屋で発せられた電波を誤受信し、正確な位置を特定することが困難となります。その解決策として、本研究では電波と共に音波を用いることでより正確な位置検出を実現できる可能性を示しました。これらの信号の受信機として、昨今病院内で活用が進むスマートフォンを用いることで、位置検出システムとしての臨床現場への導入が比較的容易に行うことができると思われます。今後は、システムの実用化に向けてさらに実験実証を重ね、位置検知精度の向上に努めたいと考えております。

受賞演題
  「高齢者介護施設における食事姿勢と椅子に関する考察

間瀬 樹省 氏 (ケアスタディ(株))

介護が必要な高齢者の自立を高め職員負担の少ない環境づくりを目指して

第44回日本医療福祉設備学会一般演題優秀賞に選定いただきありがとうございます。数少ない介護分野の発表に対し、このような評価をいただいたことを大変嬉しく思っております。介護施設においては、慢性的な人材不足により運営に苦労されている事業所も少なくありませんが、建物や設備の工夫で利用者の自立が高まり介護負担を減らすことができるという観点で行ったのが本発表です。  過去に浴室やトイレを題材に発表を行って参りましたが、第44回の学会においては食事の姿勢と家具について取り上げました。介護施設で使用されている家具の多くが利用者の身体に合っていない現状を紹介し、介護が必要な高齢者に求められる食事用家具に求められる諸条件をまとめた上で、家具の工夫により自立が高まった例をご紹介させていただきました。介護分野での建物や設備における工夫がさらに進化し、利用者の自立と介護職員の満足度向上が進むことを願っています。

受賞演題
  「在宅生活維持のための認知症患者
       -介護者間の睡眠質評価手法開発

水流 聡子 氏  (東京大学 大学院工学系研究科 科学システム工学専攻)

在宅生活維持のための認知症患者-介護者間の睡眠質評価手法開発

このたび,「一般演題優秀発表賞」を受賞させていただきましたこと,心から感謝申し上げます.この研究がとらえている社会的課題は,Aging Society を考えるとき,国際的にもいずれの先進国においても,同様に重要課題として認識されているものです.在宅認知症患者と同居する家族介護者の生活がより長く安定的に継続できるよう,その生活を見守り,シグナルを早期に検出して,安定化を図り,当該家庭の破綻というリスクを未然防止する社会技術が必要とされていると考えました.破綻シグナルとして「睡眠の質」に注目し,臨床家・工学系研究者・関連産業が協力して,研究をすすめてきました.「睡眠の質」をアセスメントする方法論の開発を通して,在宅認知症患者の家族介護者を支えるための社会的しくみを構築したいと考えています.今回の受賞を通して,提案する方法論・構築したいしくみの実現に向けて、努力して参りたいと思います.